お知らせ
デザイン誌「AXIS」リニューアル!最新号 vol.229 7/1発売
24.06.28
COVER STORY
三澤 遥
デザイナー
奇しくも本誌の発売日である2024年7月1日は、日本デザインセンター内に三澤デザイン研究室が設立されてからちょうど10年目を迎えた日でもある。三澤 遥の仕事と言えば、上野動物園の「UENO PLANET」や国立科学博物館の「WHO ARE WE」、エルメス麻布台ヒルズ店オープン時の広告のアートディレクションを思い出す人がいるかもしれない。それとも、水槽の中の景観をデザインする「waterscape」や、磁性を帯びた紙が生き物のように動く「動紙」のプロジェクトを頭に浮かべるかもしれない。三澤は常に、デザインやアートディレクションとして想起される仕事と、自らの関心を追求するプロジェクトを並行して発表してきた。無数の検証作業を繰り返しながら、デザインとデザインではないものの間を往還し続けてきた、三澤デザイン研究室の10年間の歩みを振り返る。
特集
デザインの未来地図と30のキーワード
ポストコロナの慌ただしさも収束し、次の10年を見据える節目のタイミングがやってきました。既存の制度や常識を見直すとともに、意味や目的をもう一度解釈し直す必要があるかもしれません。あるいは、ここ数年の間に見過ごされてしまった重要な主題が浮上してくる可能性もあります。テクノロジー、ビジネス、エンタメ、アートなど、社会全体のあらゆる領域でこうした再検証と再駆動のメカニズムが自然と進行していくでしょう。デザインも決してその例外ではありません。次なる10年に向けて、デザインを牽引する9人のリーダーたちは何を想うのか。彼ら彼女らに重要だと思われるキーワードを抽出してもらい、その言葉や視座からデザインの未来地図を描きます。
技術が変える社会を見据え、「人間の普遍性」を理解する
田川欣哉
デザインファーム「Takram」代表として、プロダクトサービスからブランディングまで、テクノロジーとデザインの幅広い分野に精通する田川欣哉。近年は政府の統計データのビジュアライズなど、ガブテック(政府や自治体の行政サービスDX)のプロジェクトにも携わり、社会とデザインの関係を思考してきた。AI技術が社会に浸透していく今日、どんなデザインの未来を描いているのか。
デザインの原則を保ち続けること
ジャスパー・モリソン
ジャスパー・モリソンの事務所は東ロンドンの大通りにある。人々が行き交う喧騒のなか、ブザーを押して中に入ると、小さな中庭のある心地よい空間が広がっていた。外からは想像もつかない静けさだ。モリソンは「久しぶりだな」と小さな声で筆者を迎えると、自らヤカンで湯を沸かし、お茶を淹れてくれた。1999年にAXISギャラリーで日本初の個展を開いたモリソン。その準備で彼の事務所に足繁く通った当時を振り返りながら、モリソンの思うこれからのデザインについて尋ねた。
100年後の充足を見据えて
原 研哉
2100年、日本は人口が6,000万人程度になると予測されている(5,000万人を下回る、あるいは8,000万人が目標といろいろな説はあるが)。これからの10年を考えるためには、そんな次代を見据える必要がある、と原 研哉は言う。世界に影響を与えている国でも、デンマークやスウェーデンは人口600万〜1,000万人ほどの規模で、だからこそ福祉や教育への目が届いている側面もある。人間にとっての「幸せ」や「充足」はどこから生まれるのか。それに対して、デザインはどのような影響を与えられるのか。
俯瞰力を持ち、帰結を意識的にする
横山いくこ
2021年11月、香港にオープンしたアジア最大規模のビジュアルカルチャーのミュージアム「M+」(エムプラス)。リードキュレーターである横山いくこは、日本、ヨーロッパ、アジアにおけるデザイン・建築について俯瞰的に思索してきたひとりだ。M+の立ち上げのため、アジアを軸にリサーチから作品蒐集にまで奮闘した横山は、この先10年のデザイン領域において、何が最重要項目であると考えているだろうか。
脱人間中心主義の時代に「美意識」で調理を続ける
山中俊治
最先端科学を美意識で調理したプロトタイピングで、常に新しい地平を切り拓いてきた山中俊治。少し先の未来を見せるプロダクトを形にする一方で3Dプリンターやバイオテクノロジーの活用など近未来のもののつくり方についても多くの研究を進めてきた。さまざまな業界と協業してきたデザインエンジニアであり、多くの優秀なデザイナーを育てた教育者でもある彼は、ここから先の変化をどのように捉えているのだろう。
体現としてのデザイン
深澤直人
Without Thought、アフォーダンス、スーパーノーマル、ふつう......。1990年代からデザイン界を牽引する深澤直人は、自らのデザイン理論を独自の言葉で表現することで、よりいっそうその考えを浸透させてきた感がある。THE DESIGN SCIENCE FOUNDATIONを立ち上げ、さらに考えを深めるその先に見据えるものとは。
孤独な独創か他分野とのコラボレーションか。デザイン教育の未来に必要なものは
ジュリア・カセム
インクルーシブデザインの世界的権威として、日英両国でデザイン教育に携わってきたジュリア・カセム。一貫して説き続けているのは、開発に多様な意見を取り入れるデザインプロセスのあり方だ。実践的な学びを提唱するとともに、さまざまな取り組みを続けてきた氏に、デザイン教育の未来について語ってもらった。
わからない世界で発生するデザイン
吉泉 聡
吉泉が代表を務めるTAKT PROJECTは、東京のスタジオとは別に仙台にサテライトラボを設けている。彼自身はこのラボを「問いを発生させる場所」と位置づけ、週に1度の頻度で訪れているという。完成から約3年が経った今年5月、新緑の季節が美しい仙台で初のオープンラボが開催された。実験的な研究プロジェクトも数多く手がける彼は、デザインの現状や未来にどのような視点を投げかけるのか。
近代デザインの概念からのダイナミックな転回
永井一史
理想と理論を追求するアカデミアの価値観と、経済活動と現実的な課題解決を旨とするビジネスのそれは、時に一致しないこともあるだろう。しかし、両分野を先導するリーダーだからこそ立体的に見通せるデザインの未来像があるに違いない。永井一史は、この先10年のデザインの輪郭線として、これまでのデザインの考え方を反転させるような意表をつく3つのキーワードを提示した。
第2特集
イタリアデザインはどこへ向かうのか
例えばミラノやヴェネチアが依然として世界中のデザイナーや建築家にとっての見本市や実験的創造の場として機能しているのに対し、今現在のイタリアデザイン界が圧倒的な影響力を誇っているという話は残念ながら耳にしない。その全盛期はスターデザイナーたちが闊歩し、華やかなメーカーが話題性あふれるプロダクトを量産した1960年代から70年代にかけてというのは広く知られているところではある。本特集では、そんな黄金期の軌跡を辿りつつ、イタリアデザインの現在の地平を浮かび上がらせることを目的としている。急激なグローバリゼーションやテクノロジーの進化、さらにパンデミックを経たイタリアデザインはどこへ向かうのか。特集全体は主に栄光の時代にフォーカスした「温故」パートと、2000年以降に活躍する新世代デザイナーや産業デザインの動きに着目した「知新」パートで構成した。伝統と革新のバランスを巧みにとりながら、その根底には職人的マインドがあるという点で、日本との共通点も多く見られるイタリアデザイン。その変遷を体系的に理解することは大きな示唆に富んでいる。
連載
Ambience 気配
瀧本幹也
LEADERS
山崎 貴(映画監督)
Global Creators Labs
レフィーク・アナドール・スタジオAI&アーキテクチャー
アフリカの実践者たち
ブブ・オギシ(ファイバー作家、ブランドディレクター)
EYES ON K-DESIGN
DDPから発信するデザイン首都ソウルのブランディング戦略
Sci-Tech File
虫こぶって何? 昆虫×植物が生む多様で奇妙な形の謎を解く
ひとつのピースから
クリネックス ティシューペーパー(1964)
意思決定のデザイン
なぜ今、意思決定のデザインが必要なのか
太古のクリエイティビティ
先史時代のグラフィティ
詩的工学演習
分解は探検に似ている
視点モノローグ
無用
クリエイターズナビ
カレン・アン・ドナチェ & アンディ・シミオナート、小池俊起、Studio Ololoo、ライラ・カセム、横山翔平
はじまりのはじまり
その線は、どこからうまれたのか
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